目次(まとめ)
◾️ 指数型分布族は一様最強力検定につながる
◾️ 尤度関数を変形して、最強力検定になる統計量を見つける
◾️ 参考文献
こんにちは、みっちゃんです。
今回の記事では、2012年に行われた統計検定1級の統計数理の問題(問4)を取り上げて、解答を得るための方針について解説します(問題の詳細については、参考文献などをご覧ください)。
この問題では、平均 \(\mu\)、分散1の正規母集団から \(n\) 個の標本をランダムに取り出したときの標本平均 \({\overline x}\) について、信頼区間などを考えています。
指数型分布族は一様最強力検定につながる
指数型分布族とは、正規分布(こちら)やガンマ分布(こちら)、2項分布(こちら)、ポアソン分布(こちら)、負の2項分布(こちら)のように、確率(密度)関数が、以下のような形で表現されるような確率分布です。
$$f(x | \theta) = h(x)~ {\rm exp}\{\theta T(x) - c(\theta)\}$$
ここで、\(x\) は標本、\(\theta\) は母集団のパラメータ、\(h(x)\) と \(T(x)\) は標本の情報を用いて得られる定数、\(c(\theta)\) はパラメータの情報を用いて得られる定数です。
ここで、\(T(x)\) を標本 \(x\) を用いて得られた統計量とすると、この \(T(x)\) に基づく検定が(一様)最強力検定になります(最強力検定についてはこちらの記事をご参照ください)。
尤度関数を変形して、最強力検定になる統計量を見つける
以前の記事で紹介したように、尤度比に基づく検定が最強力検定になることがわかっているので、ここでは尤度比検定を考えます。
そのために、尤度関数 \(\lambda(\mu)\) を考えます。
いま母集団が、平均 \(\mu\)、分散1の正規分布にしたがっているので、\(n\) 個の標本を取り出して、同時確率密度関数を求めて、尤度関数にします。
$$\begin{eqnarray}\lambda(\mu) &=& \prod_{i = 1}^n \frac{1}{\sqrt{2\pi}} {\rm exp}\{-\frac{(x_i - \mu)^2}{2}\}\\&=&(\frac{1}{\sqrt{2\pi}})^n \prod_{i = 1}^n {\rm exp}\{-\frac{(x_i - \mu)^2}{2}\}\\&=&(\frac{1}{\sqrt{2\pi}})^n {\rm exp} \{\sum_{i = 1}^n {-\frac{(x_i - \mu)^2}{2}}\}\\&=&(\frac{1}{\sqrt{2\pi}})^n {\rm exp} \{\sum_{i = 1}^n \{-\frac{x_i^2}{2} + \mu x_i - \frac{\mu^2}{2}\}\}\\&=& (\frac{1}{\sqrt{2\pi}})^n {\rm exp} \{\sum_{i = 1}^n \{-\frac{x_i^2}{2}\}\} {\rm exp} \{\sum_{i = 1}^n \{\mu x_i - \frac{\mu^2}{2}\}\}\\&=&(\frac{1}{\sqrt{2\pi}})^n {\rm exp} \{\sum_{i = 1}^n \{-\frac{x_i^2}{2}\}\} {\rm exp} \{n \mu \frac{1}{n}\sum_{i = 1}^n x_i - \frac{n \mu^2}{2}\}\end{eqnarray}$$
ここで、
$$\begin{eqnarray}h(x) &=& (\frac{1}{\sqrt{2\pi}})^n {\rm exp} \{\sum_{i = 1}^n \{-\frac{x_i^2}{2}\}\}T(x) \\&=& \frac{1}{n}\sum_{i = 1}^n x_ic(\theta) \\&=& \frac{n \mu}{2}\end{eqnarray}$$
と考えると、統計量 \(T(x)\)、つまり、標本の平均値をつかった統計が、最強力検定になることがわかります。
参考文献
- 日本統計学会「統計検定1級 公式問題集」実務教育出版
- 久保川達也「現代数理統計学の基礎」共立出版