まとめ(目次)

◾️ 検定の "サイズ" と "レベル" は有意水準を用いて定義される

◾️ 尤度比に基づく検定が最強力な検定となる

◾️ 参考文献


こんにちは、みっちゃんです。

今回の記事では、「統計的な仮説検定において設定する棄却域が意味すること」「尤度比検定で得られる棄却域の特徴」について紹介します。

検定の "サイズ" と "レベル" は有意水準を用いて定義される

検定には、「第1種の誤り」と「第2種の誤り」という2種類の誤りがあり、これらの誤りは「検出力関数」を使って表現することができます(詳しくは、こちらの記事をご覧ください)。

帰無仮説が成り立つパラメータ \(\theta\)、帰無仮説の棄却域 \(R\)を用いて、検出力関数 \(\beta(\theta)\) は以下のように得られます。
$$\beta(\theta) = P_{\theta} ({\bf X} \in R)$$
右辺は、例えば、何らかの確率分布にしたがう母集団からサンプリングした標本 \({\bf X}\) が棄却域 \(R\) に含まれる確率を示しています。当然、母集団のパラメータがどのような値をもつかによって、その確率は変わってきます(このため、\(P_{\theta}\) と表記しています)。

ここで棄却域 \(R\) は、"誤って帰無仮説を棄却してしまう確率" である有意水準 \(\alpha ~(0 < \alpha < 1)\) を用いた以下の関係を満たすように調整されます。
$${\rm sup}_{\theta \in \Theta_0} P_{\theta} ({\bf X} \in R) \leq \alpha$$
つまり、帰無仮説が成り立つパラメータ \(\theta\) は、パラメータ空間 \(\Theta_0\) の中でいろいろな値をとりますが、それぞれのパラメータを用いて得られる確率の上限(supremum)が \(\alpha\) 以下になるように、棄却域を決めるということです。

このように設定された棄却域を用いた検定は「レベル \(\alpha\) の検定」と呼ばれます。

さらに、確率の上限が \(\alpha\) に一致するように棄却域を設定する検定は「サイズ \(\alpha\) の検定」と呼ばれます。
$${\rm sup}_{\theta \in \Theta_0} P_{\theta} ({\bf X} \in R) = \alpha$$

尤度比に基づく検定が最強力な検定となる

以前の記事で、尤度比検定統計量について紹介しました。

例えば、母集団がパラメータ \(\theta\) で表現される確率分布にしたがい、母集団からランダムにサンプリングした標本 \({\bf X}\) を用いて、\(\theta = \theta_0\) なのか \(\theta = \theta_1\) なのかを検定したいとします。ここでは、以下のように帰無仮説 \(H_0\) と対立仮説 \(H_1\) を考えます。
$$\begin{eqnarray}H_0 &:& \theta = \theta_0\\H_1 &:& \theta = \theta_1~~(\theta_0 \neq \theta_1)\end{eqnarray}$$
このとき、尤度比検定統計量 \(\lambda ({\bf X})\) は、以下のように、同時確率(密度)関数を用いて表現できます。
$$\lambda ({\bf X}) = \frac{f_n ({\bf X} | \theta_0)}{f_n ({\bf X} | \theta_1)}$$
尤度比検定では、この尤度比検定統計量 \(\lambda ({\bf X})\) が、正の定数 \(\frac{1}{k}\) より小さくなるときに、帰無仮説 \(H_0\) を棄却するので、棄却域 \(R\) は以下のように表現できます。
$$R = \{{\bf x} \in \chi | \frac{f_n ({\bf x} | \theta_0)}{f_n ({\bf x} | \theta_1)} < \frac{1}{k}\}$$
つまり、
$$R = \{{\bf x} \in \chi | f_n ({\bf x} | \theta_1) > k f_n ({\bf x} | \theta_0)\}$$
となります。

ネイマン・ピアソンの基本定理では、\(P_{\theta_0}({\bf X} \in R) = \alpha\) を満たすときに、この棄却域 \(R\) を用いた尤度比検定が "最強力" であることを主張しています。

"最強力" とは、レベル \(\alpha\) の検定の中で、最も強力な検定であることを意味します。

参考文献

久保川達也「現代数理統計学の基礎」共立出版