目次(まとめ)
◾️ t-分布(自由度 \(m\))の確率密度関数
◾️ ヤコビアンを使って確率変数の変数変換を行う
◾️ 参考文献
こんにちは、みっちゃんです。
今回の記事では、正規分布にしたがう母集団に関する分布について有名な「t-分布」の確率密度関数を導出する手順について解説します。
t-分布(自由度 \(m\))の確率密度関数
自由度 \(m\) のt-分布は、以下のように定義される確率変数 \(T\) の分布です。
$$T = \frac{Z}{\sqrt{\frac{U}{m}}}$$
ここで、\(Z\) は標準正規分布(平均:0、分散:1;詳細はこちらの記事)にしたがう確率変数、\(U\) は自由度 \(m\) のカイ2乗分布(平均:\(m\)、分散:\(2m\)、詳細はこちらの記事)にしたがう、互いに独立な確率変数です。
ここで、自由度 \(m\) は、標本の数 \(n\) から1を引いた数になります。
確率密度関数
$$f_T (t | m) = \frac{\Gamma(\frac{m+1}{2})}{\Gamma(\frac{m}{2})} \frac{1}{\sqrt{\pi m}} (1 + \frac{t^2}{m})^{-\frac{m+1}{2}}$$
ヤコビアンを使って確率変数の変数変換を行う
まず、確率変数 \(T\) に含まれる確率変数 \(Z\) と \(U\) について、確率密度関数を考えます。
それぞれ標準正規分布(平均:0、分散:1)、自由度 \(m\) のカイ2乗分布(平均:\(m\)、分散:\(2m\))にしたがうので、以下のようになります。
確率変数 \(Z\) の確率密度関数
$$f_Z(z) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi}} {\rm exp}\{-\frac{z^2}{2}\}$$
確率変数 \(U\) の確率密度関数
$$f_U(u) = \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} u^{\frac{m}{2}-1} {\rm exp}\{-\frac{u}{2}\}$$
いま、確率変数 \(Z\) と \(U\) は互いに独立であるという条件があるので、同時確率密度関数 \(f_{Z,U}(z, u)\) は、単純に2つの確率密度関数をかけ合わせたものになります。
$$f_{Z,U}(z, u) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi}} {\rm exp}\{-\frac{z^2}{2}\} \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} u^{\frac{m}{2}-1} {\rm exp}\{-\frac{u}{2}\}\qquad (*)$$
ここで、新たな確率変数 \(T\) と \(W\) を考え、\(T = \frac{Z}{\sqrt{\frac{U}{m}}}\)、\(W = U\) という変数変換を考えます(確率変数 \(W\) は便宜上準備します)。
変数変換のためには、ヤコビアン \(J(t,w)\) を考える必要があるので、\(z = h_1(t,w)\) と \(u = t_2(t,w)\) を設定することになります。
ここでは、\(t = \frac{z}{\sqrt{\frac{u}{m}}}\) と \(w = u\) を考えているので、\(z = h_1(t,w) = t\sqrt{\frac{w}{m}}\) と \(u = t_2(t,w) = w\) になります。
以前の記事で紹介したように、ヤコビアンは以下のような定義になります。
$$ J(t, w) = {\rm det} \left( \begin{array}{cc} \frac{\partial h_1(t, w)}{\partial t} & \frac{\partial h_1(t, w)}{\partial w} \\ \frac{\partial h_2(t, w)}{\partial t} & \frac{\partial h_2(t, w)}{\partial w} \end{array} \right) $$
それぞれの要素の偏微分を計算すると、以下のようなヤコビアンが得られます。
$$J(t, w) = {\rm det} \left( \begin{array}{cc} \sqrt{\frac{w}{m}} & \frac{t}{2\sqrt{mw}} \\ 0 & 1 \end{array} \right) = \sqrt{\frac{w}{m}}$$
変数変換により得られた確率変数 \(T\) と \(W\) の同時確率密度関数 \(f_{T, W} (t, w)\) は、一般に以下のように定義されます。
$$f_{T, W} (t, w) = f_{Z,U} (h_1(t, w), h_2(t, w)) |J(t, w)|$$
式 \((*)\) について、\(z = h_1(t,w) = t\sqrt{\frac{w}{m}}\)、\(u = t_2(t,w) = w\)、\(J(t, w) = \sqrt{\frac{w}{m}}\) を代入すると、以下のようになります。
$$f_{T,W}(t, w) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi}} {\rm exp}\{-\frac{t^2w}{2m}\} \frac{1}{\Gamma(\frac{m}{2})} (\frac{1}{2})^{\frac{m}{2}} w^{\frac{m}{2}-1} {\rm exp}\{-\frac{w}{2}\}\sqrt{\frac{w}{m}}$$
これを \(w\) に関して積分することで、確率変数 \(T\) の確率密度関数を得ることができます。
詳しくは、参考文献などをご覧ください。
参考文献
久保川達也「現代数理統計学の基礎」共立出版