目次(まとめ)

◾️ ヤコビアンを使って確率変数の変数変換を行う

◾️ ガンマ分布とベータ分布の関係を使って整理する

◾️ 参考文献


こんにちは、みっちゃんです。

今回の記事では、2つの確率分布にしたがう確率変数に対して、何らかの関数による変数変換が行われ、2つの新たな確率変数が生じたときに、それらがどのような確率分布にしたがうのか考えます。

ヤコビアンを使って確率変数の変数変換を行う

ここでは、例として、お互いに独立な(影響を受けない)確率変数 \(X\) と \(Y\) があり、\(X\) はガンマ分布 \(Ga (a, 1)\)、\(Y\) はガンマ分布 \(Ga (b,1)\) にしたがうとします。

一般に、ガンマ分布は、形状母数 \(\alpha\) と尺度母数 \(\beta\) を使って \(Ga (\alpha, \beta)\) と表され、以下のような確率密度関数をもつ確率分布を示します(詳細はこちらの記事をご覧ください)。
$$f_X (x | \alpha, \beta) = \frac{1}{\Gamma (\alpha)}\frac{1}{\beta}(\frac{x}{\beta})^{\alpha-1}{\rm exp}\{-\frac{x}{\beta}\}$$
いま、確率変数 \(X\) と \(Y\) は尺度母数 \(\beta\) が1のガンマ分布にしたがうので、その確率密度関数は以下のようになります。
$$f_X (x | \alpha, 1) = \frac{1}{\Gamma (\alpha)}x^{\alpha-1}{\rm exp}\{-x\}$$
$$f_Y (y | \alpha, 1) = \frac{1}{\Gamma (\alpha)}y^{\alpha-1}{\rm exp}\{-y\}$$
ここで、新たな確率変数 \(Z\) と \(W\) を考え、それぞれ \(Z = X + Y\) と \(W = X/(X + Y)\) という変数変換で得られるとします。

この変数変換では、確率変数 \(Z\) にしたがう値 \(z\) は \(x + y\) で得られ、確率変数 \(W\) にしたがう値 \(w\) は \(x/(x + y)\) で得られることになります。

まず、\(z = x + y\) と \(w = x/(x + y)\) という2つの関係式から、\(x = zw (=h_1 (z, w))\) と \(y = z(1-w) (=h_2(z, w))\) という式を立てることができます(連立方程式を解くだけです)。

得られた \(h_1\) と \(h_2\) の式を用いて、ヤコビアン \(J(z, w)\) を計算します。ヤコビアンの定義は、以下のようになります。
$$ J(z, w) = {\rm det} \left( \begin{array}{cc} \frac{\partial h_1(z, w)}{\partial z} & \frac{\partial h_1(z, w)}{\partial w} \\ \frac{\partial h_2(z, w)}{\partial z} & \frac{\partial h_2(z, w)}{\partial w} \end{array} \right) $$
それぞれの要素の偏微分を計算すると、以下のようなヤコビアンが得られます。
$$J(z, w) = {\rm det} \left( \begin{array}{cc} w & z \\ 1-w & -z \end{array} \right) = w(-z) - z(1-w) = -z$$
変数変換により得られた確率変数 \(Z\) と \(W\) の同時確率密度関数 \(f_{Z, W} (z, w)\) は、一般に以下のように定義されます。
$$f_{Z, W} (z, w) = f_{X, Y} (h_1(z, w), h_2(z, w)) |J(z, w)|$$
ここで、確率変数 \(X\) と \(Y\) は独立であるとしているので、以下のように変形することができます。
$$f_{Z, W} (z, w) = f_X (h_1(z, w)) f_Y (h_2(z, w)) |J(z, w)|$$

ガンマ分布とベータ分布の関係を使って整理する

上で得られた式を整理していきます。
$$f_{Z, W} (z, w) = f_X (h_1(z, w)) f_Y (h_2(z, w)) |J(z, w)|$$
$$\qquad = \frac{1}{\Gamma (a)}(zw)^{a-1}{\rm exp}\{-zw\} \times \frac{1}{\Gamma (b)}(z(1-w))^{b-1}{\rm exp}\{-z(1-w)\} \times z$$
ここで、\(z\) と \(w\) を分けるように式を変形し、\(\frac{\Gamma(a + b)}{\Gamma (a + b)}\) をかけあわせることで、以下の式が得られます。
$$f_{Z, W} (z, w) = \frac{1}{\Gamma(a + b)}z^{a + b -1} {\rm exp}\{-z\} \times \frac{1}{B(a, b)}w^{a-1}(1-w)^{b-1}$$
ここで、
$$B(a, b) = \frac{\Gamma(a) \Gamma(b)}{\Gamma(a + b)}$$
です。

参考文献

久保川達也「現代数理統計学の基礎」共立出版

「確率分布」は以下の記事にまとめていきます