こんにちは、みっちゃんです。

今回の記事では、有名科学誌であるネイチャー(Nature)から以下の記事を紹介します。

※記事のエッセンスだけ抜き出して初心者向けに紹介していますので、内容の詳細に興味がある方は(当然ですが)原著論文をご参照ください。

紹介記事(Reference)
Poore, G.D., Kopylova, E., Zhu, Q. et al. Microbiome analyses of blood and tissues suggest cancer diagnostic approach. Nature (2020).


がんは、歴史的にゲノム(遺伝子)の疾患であると考えられてきました。

しかし近年では、いくつかのがんにおいては、「微生物叢」がかなり関与しているということが分かってきています。

「微生物叢」とは、「微生物の集まり」のことです。

例えば、胃腸関係のがんには、糞便の微生物叢が関わっていることがわかっています。

今回紹介する記事では、さまざまながんについての生物学的データを集めたデータベースである「TCGA」を使って、さまざまながんと微生物との関係を明らかにしています。

目次(まとめ)
- 「TCGA」とは、さまざまながんについての生物学的データを公開しているデータベース
- 33種類のがんについて、がんと微生物との関係を明らかにした
- 微生物の解析により、新たながん診断ツールを開発できる可能性がある
- 参考文献

「TCGA」とは、さまざまながんについての生物学的データを公開しているデータベース

TCGA(The Cancer Genome Atlas)とは、さまざまながんを患っている患者さんから提供された組織サンプルを分析し、がん細胞の中の遺伝子の量などを測定した結果を収録しているデータベースです。

2020年3月13日時点での最新の統計値を見ると、67の部位(肺や肝臓など)のがんを患っている83,709人の患者さんから取得された526,931ファイルが公開されているようです。

これらのデータが、がんの治療法の確立につながるといいですね。

33種類のがんについて、がんと微生物との関係を明らかにした

紹介記事の著者らは、 TCGAから、33種のがんを患っている10,481人の患者さんから得られた18,116つのサンプルを解析しました。

上で述べたように、胃腸関係のがんと微生物の関係は報告されていましたが、そのような報告例はわずかでした。

この原因として、著者らは、「データを収集する段階でのサンプル汚染」を挙げています。

つまり、TCGAには膨大な数のデータが登録されているけれども、それぞれのデータが、生物学的に"きれいな"サンプルとは言えないということです。

この研究では、サンプル汚染の問題を解決できるように開発された技術を用いて、さまざまながんと微生物の関係を明らかにすることを可能にしました。

微生物の解析により、新たながん診断ツールを開発できる可能性がある

さまざまながんについて、関係する微生物を探索してみると、面白いことがわかりました。

それは、「さまざまながんと特定の微生物群との関係」です。

しかしながら、微生物の解析は、いまだ発展途上であり、多くの技術的/生物学的な限界があります。

今後、がん生物学者と微生物学者が協力(コラボレーション)していく必要があると著者らは指摘しています。

将来的に、微生物に基づく新たながん診断ツールが、医療現場で使われるようになるかもしれませんね。

参考文献

Duncan, C.G., Leary, R.J., Lin, J.C. et al. Identification of microbial DNA in human cancer. BMC Med Genomics 2, 22 (2009).

英語学習者向けのメモ

*microbiome:微生物叢
*microbial:微生物の
*warrant:正当化する、保証する
*faecal:糞便の
*gastrointestinal:胃腸の
*procedural:手続きの
*rational:合理的な
*treatment-naïve patient:治療未経験の患者