こんにちは、みっちゃんです。

今回の記事では、有名科学誌であるネイチャー(Nature)から以下の記事を紹介します。

※記事のエッセンスだけ抜き出して初心者向けに紹介していますので、内容の詳細に興味がある方は(当然ですが)原著論文をご参照ください。

紹介記事(Reference)
Raymond, J.L. et al., Research on the cerebellum yields rewards, Nature 579, 202-203 (2020).



わたしたち人間は、さまざまな報酬を目指して行動しています。

例えば、お菓子やボーナス、飛行機のフライトマイルなど、魅力的な報酬がたくさんあります。

今回の記事で紹介するのは、報酬を目指して行動を起こす際に、脳内の「小脳」と呼ばれる部分が重要な役割を果たしていることを発見したという研究です。

目次(まとめ)
- 小脳は、神経のつながりを制御して、運動を学習する役割をもつことが知られていた
- 動物は、報酬を目指し、小脳を使って行動していることを発見
- 小脳の細胞は、成功/失敗体験を短時間だけ記憶している

小脳は、神経のつながりを制御して、運動を学習する役割をもつことが知られていた

みなさんは、スポーツをやっていますか?

例えば、テニスのバックハンドの動きを練習するときには、とりあえず反復練習をして、体に動きを覚えさせますよね。

この時に、重要な役割を果たしているのが、脳内の「小脳」と呼ばれる部分です。

これまでの50年間にわたる研究において、「間違った動き」を犯す原因となっている神経の繋がりを弱めて、少しずつ動きの精度を高めているというのではないか、というアイデアが示されてきました。

そのほかにも、小脳は、社会的振る舞いのような認知機能にも貢献しています。

動物は、報酬を目指し、小脳を使って行動していることを発見

例えば、イヌをしつける時、言葉に対して適切な動きをさせるように、報酬(例えば、なでる)を用意します。

つまり、人間だけでなく、動物も報酬を目指して行動しているわけです。


この研究では、サルを使った実験を行いました。

コンピュータ画面に、2枚の画像が表示されるようにし、それぞれ「右手をあげた時」か「左手をあげた時」に、報酬としてジュースがもらえるように設定しました。

当然、サルは報酬のジュースがもらえるように試行錯誤を繰り返します。

その過程で、小脳における細胞(プルキンエ細胞)の活動が変化していることを発見しました。

小脳の細胞は、成功/失敗体験を短時間だけ記憶している

成功/失敗についての情報は、小脳の細胞の活動として保存されていました。

その細胞の中でも、ある細胞は「報酬がもらえるような正しい行動ができたときに活発に」なり、また別の細胞は「報酬がもらえないような間違った行動をしてしまったときに活発に」なることがわかりました。

このような「活発になる」状態は、試行錯誤の間(ある施行が終わって次の施行が始まるまでの間)の数百ミリ秒だけ続くものであることもわかりました。

つまり、小脳の細胞は、成功/失敗体験をこの短時間だけ記憶しているということになります。


「成功」した経験も「失敗」した経験も、どちらも学習には必要ということですね。

英語学習者向けのメモ

*cerebellum:小脳
*reward:報酬
*cognition:認知
*alike:同様に
*reinforcement:強化
*shape:形成する
*behavioural response:行動反応
*the likelihood of 〜:〜の可能性
*implicated in 〜:〜に関わる
*motor-skill learning:運動スキル学習
*navigation:ナビゲーション、運行指示
*a flurry of 〜:相次ぐ〜
*leverage 〜:〜を利用する
*blur 〜:〜をぼやけさせる
*visual cues:視覚的な手がかり
*Purkinje:プルキンエ
*learnt:learnの過去・過去分詞形