こんにちは、みっちゃんです。

今回の記事では、有名科学誌であるサイエンス(Science)の姉妹誌から以下の記事を紹介します。

※記事のエッセンスだけ抜き出して初心者向けに紹介していますので、内容の詳細に興味がある方は(当然ですが)原著論文をご参照ください。

紹介記事(Reference)
Yamazaki, Y. et al., PAX1 is essential for development and function of the human thymus, Science Immunology 5, eaax1036 (2020).



みなさんは、「乳腺」の重要性をご存知でしょうか?

実は「乳腺」はとても重要な器官なのですが、その発達と機能獲得のためにPAX1というタンパク質が不可欠であるという報告です。

目次(まとめ)
- 「乳腺」は、母乳を介して、栄養と免疫機能を提供する
- PAX1というタンパク質が「乳腺」になる細胞の発達を制御する
- 参考文献

「乳腺」は、母乳を介して、栄養と免疫機能を提供する

ヒト、イヌ、ネコ、サル、などの哺乳類は「授乳」を行うことで子を育みます。

「乳腺」はこの生命現象を担う重要な器官であり、母乳を作り、子に母乳を届けます。

「母乳」には、栄養だけでなく、免疫機能(抗体)が含まれています。

また、女性の方は身近に感じていることだと思いますが、「乳腺」は「妊娠期」「出産期」「授乳期」「離乳期」という生殖サイクルの中でダイナミックに変化していきます。

2017年の東北大学の研究グループの報告では、「授乳期」における「乳腺」の環境変化の仕組みが解明されています [1]。

PAX1というタンパク質が「乳腺」になる細胞の発達を制御する

ヒトは、非常に多くの細胞からなっている、多細胞生物です。

1つ1つの細胞には、「DNA」が入っていて、「DNA」には約20000個の「遺伝子」が乗っていることが知られています。

しかし、目の細胞と皮膚の細胞が全く違うものであることから想像されるように、それぞれの細胞で全ての「遺伝子」が常に機能しているわけではありません。

つまり、どの「遺伝子」を機能させるか、制御する役割をもつ分子があります。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の Yamazakiさんらが注目したPAX1というタンパク質も、「遺伝子」の機能を制御する分子(転写因子)の1つです。

PAX1が正常に作られないと、 免疫不全疾患である2型のOFC症候群を生じてしまいます。

この疾患は、免疫不全に加えて、顔の異形症、聴力低下、骨格異常によっても特徴づけられます。

OFC症候群を患っている患者さんから、(ノーベル賞を受賞した)iPS細胞を作り出し、さらに乳腺になる細胞に変換させて、その細胞で機能している「遺伝子」を調べると、PAX1が「乳腺」の発達や機能獲得において重要であることが明らかになりました。

参考文献

[1] Niimi, K., Development of Immune and Microbial Environments Is Independently Regulated in the Mammary Gland, Mucosal Immunol. 11, 643-653 (2018).

英語学習者向けのメモ

*a spectrum of 〜:さまざまな〜
*encompass 〜:〜を網羅する
*immune deficit:免疫不全
*attributed to 〜:〜に起因する
*biallelic:両アレルの
*dysmorphism:異形症
*hearing loss:聴力低下
*rectify:修正する
*hematopoietic stem cell:造血幹細胞
*be subjected to 〜:〜を受ける
*engraftment:生着
*progenitor cell:前駆細胞
*pharyngeal pouch:咽頭嚢