こんにちは、みっちゃんです。

今回の記事では、有名科学誌であるネイチャー(Nature)から以下の記事を紹介します。

※記事のエッセンスだけ抜き出して初心者向けに紹介していますので、内容の詳細に興味がある方は(当然ですが)原著論文をご参照ください。

紹介記事(Reference)
Smriti Mallapaty, Why does the coronavirus spread so easily between people?, Nature (2020).


以前の記事(2020/1/26)で、新型コロナウイルスについて紹介しました。

その頃には、中国での感染者が571名、ということだったのですが、1ヶ月ほどが経過して、世界での感染者が10万人を超え、日本国内でも感染拡大への警戒感が強まるようになってきました。

世界中の研究者は「なぜ新型コロナウイルスが簡単に伝染していくのか?」という点を明らかにしようとしています。

目次(まとめ)
- 治療のためのターゲットとして、「ウイルス上」と「ヒト細胞上」にあるタンパク質が有力
- 「ウイルス上」のタンパク質は、ヒトのさまざまな臓器への感染を可能にする
- 「新型コロナウイルス」の侵入経路を遮断するための薬を開発

治療のためのターゲットとして、「ウイルス上」と「ヒト細胞上」にあるタンパク質が有力

新型コロナウイルスの感染者は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者数の10倍以上となりました。

新型コロナウイルスの遺伝学的/構造的解析により、ウイルスの鍵となる特徴が明らかになりました。

それは「ウイルス表面上にある1つのタンパク質」です。

このタンパク質が、ヒトの細胞に簡単に感染する原因である可能性があります。

また、ウイルスのヒト組織への侵入経路として、「細胞の膜に存在する受容体」が調べられています。

したがって、「ウイルス表面上にある1つのタンパク質」「細胞の膜に存在する受容体」をターゲットにするような薬を開発することができれば、治療効果が期待されます。

しかし、それだけで十分かどうかという保証はありません。

「ウイルス上」のタンパク質は、ヒトのさまざまな臓器への感染を可能にする

一般にコロナウイルス(いま新型とされているのは7種類目)は、細胞に感染する際、細胞膜に結合するために「先の尖ったタンパク質」を使用します。

新型コロナウイルスの遺伝的解析により、この「先の尖ったタンパク質」が他のコロナウイルスとは異なっていることが分かりました。

この「先の尖ったタンパク質」は、ヒト細胞の酵素(フーリンと呼ばれる)によって活性化されることで、ウイルスの感染につながります。

「フーリン」は、肺や肝臓、大腸など、ヒト組織の多くで見られるタンパク質であることから、新型コロナウイルスは、さまざまな組織にアタックできる能力があるということになります。

実際の臨床現場でも、新型コロナウイルスの患者で「肝臓の機能不全」といった症状が観察されていることからも、その新型コロナウイルスならではの能力であると考えられます。

これまでのコロナウイルスは、「フーリン」によって活性化されない特徴があり、今回の新型コロナウイルスが、感染能力的にも新型であると言えるかもしれません。

また、他のグループは、「先の尖ったタンパク質」ではなく、他のタンパク質(血球凝集素と呼ばれるタンパク質)が重要だと主張していたりもするので、まだ未知の部分が多いようです。

「新型コロナウイルス」の侵入経路を遮断するための薬を開発

上に述べたような感染メカニズムから、「フーリン」の働きをブロックすることができる分子を開発できれば、病気の治療につながると考えられます。

また、他の研究グループは、新型コロナウイルスがヒト細胞に簡単に感染できるか説明できる特徴として、「先の尖ったタンパク質」がヒト細胞上にある受容体(ACE2)に非常に強く結合することを実験で明らかにしました。

その強さは、SARSウイルスの10倍以上の強さということです。

したがって、この受容体も、有望なターゲット候補になるかもしれません。

ただし、このような研究を進める研究者も行動が制限されて、研究所に通勤できないような状況も発生しているようです。

状況が改善して、良い治療法が見つかるといいですね。

英語学習者向けのメモ

*microscopic feature:顕微鏡的特徴
*pathogen:病原体
*handful:一握りの
*doorway:出入り口
*contract:病気にかかる
*spiky:先端の尖った
*invader:侵入者
*hemagglutinin:血球凝集素