目次(まとめ)
◾️ 「積率」とは、確率分布の特性を表すための指標
◾️ 「積率母関数」とは「積率」を生成する関数
◾️ 「確率母関数」とは「確率」を生成する関数
◾️ 参考文献
こんにちは、みっちゃんです。
以前の記事で、確率分布の特性を表すための指標として、「平均」や「分散」を紹介しました。
今回の記事では、統計学の分野で重要な「積率」とそれを生み出す「積率母関数」、「確率」とそれを生み出す「確率母関数」を解説します。
「積率」とは、確率分布の特性を表すための指標
「確率(かくりつ)」という単語は、なじみがあると思いますが、「積率(せきりつ)」という単語は、なじみがないかもしれません。
「積率」は「モーメント」とも呼ばれ、確率分布の特性を表すための指標です。
確率分布の特性とは、平均や分散だけでなく、歪み具合を表す歪度(わいど)や尖り具合を表す尖度(せんど)があります。
◾️ 平均
以前の記事で紹介したように、平均\(\mu\)は、確率変数\(X\)の期待値\(E[X]\)として表現されます。
「平均」は、積率という単語を使って「原点まわりの1次積率」とも呼ばれます。
一般に「原点まわりの\(k\)次積率\(\mu'_k\)」は、
$$\mu'_k = E[X^k] \qquad (k = 1, 2, ...)$$
と表現されます。つまり、平均は、
$$\mu'_1 = E[X^1]$$
となるわけです。
◾️ 分散
以前の記事で紹介したように、分散\(\sigma^2\)は、\((X - \mu)^2\)の期待値\(E[(X - \mu)^2]\)として表現されます。
「分散」は、積率という単語を使って「平均まわりの2次積率」とも呼ばれます。
一般に「平均まわりの\(k\)次積率\(\mu_k\)」は、
$$\mu_k = E[(X - \mu)^k] \qquad (k = 1, 2, …)$$
と表現されます。つまり、分散は、
$$\mu_2 = E[(X - \mu)^2]$$
となるわけです。
◾️ 歪度
歪度(わいど)とは、確率分布のゆがみ具合を表した指標です。
歪度\(\beta_1\)は「平均まわりの3次積率」と「分散(標準偏差)」を使って、算出することができます。
$$\beta_1 = \frac{\mu_3}{\sigma^3} = \frac{E[(X - \mu)^3]}{\sigma^3}$$
◾️ 尖度
尖度(せんど)とは、確率分布のとがり具合を表した指標です。
尖度\(\beta_2\)は「平均まわりの4次積率」と「分散(標準偏差)」を使って、算出することができます。
$$\beta_2 = \frac{\mu_4}{\sigma^4} = \frac{E[(X - \mu)^4]}{\sigma^4}$$
「積率母関数」とは「積率」を生成する関数
積率母関数とは、英語で "moment generating function"、つまり、"積率を生み出す関数" です。
確率分布を特徴付けるための関数なので、1つの確率分布に対して1つの関数が対応しています。
一般に、\(M_X(t) (|t| < h; h > 0)\)で表され、
$$M_X(t) = E[e^{tX}]$$
となります。つまり、\(e^{tX}\)の期待値が、積率母関数という意味です。
ここで、\(M_X(t)\)を\(t\)に関して微分すると、
$$E[X^k] = M_X^{(k)}(0)$$
となります。
ただし、積率母関数は常に存在するわけではないので、複素数を用いた特性関数\(\varphi_X(t)\)を使用するほうが好ましいとされています。
$$\varphi_X(t) = M_X(it)$$
「確率母関数」とは「確率」を生成する関数
確率母関数とは、英語で "probability generating function"、つまり、"確率を生み出す関数" です。
積率母関数と同様に、確率分布を特徴付けるための関数なので、1つの確率分布に対して1つの関数が対応しています。
一般に、\(G_X(s) (-1 \leq s \leq 1)\)で表され、
$$G_X(s) = E[s^X] = \sum_{k = 0}^{\infty} s^k p(k)$$
となります。ここで、\(p(k)\)が確率変数\(X\)が\(k\)となる確率を表していて、式を変形すると、
$$p(k) = \frac{1}{k!} G_X^{(k)}(0)$$
となります。
また、確率母関数と積率母関数の関係は、以下のようになります。
$$M_X(t) = G_X(e^t)$$
参考文献
久保川達也「現代数理統計学の基礎」共立出版