目次(まとめ)

  • ◾️ 認知症と診断された人に対応するためには、認知症を正しく理解することが必要

  • ◾️ さまざまな不思議行動の裏にある原因を理解する

  • ◾️ できなくなったことを悲観するだけでなく、できることがあることをポジティブに考える


人生100年時代と言われますが、高齢化とともに「認知症」を抱える人が増えています。いざ身近な家族が認知症を発症したときに、どのように対応したらいいのかわかりません。認知症を手軽に学べる、お勧めの本はありますか?

先日(2020年12月17日)、NHK番組「クローズアップ現代プラス」でも「認知症の私が認知症の相談にのってみたら…」と題して、認知症と診断された人とその家族の悩みを解決する取り組みが紹介されていましたが、多くの人が "認知症" について理解を深める必要性が高まっていると思います。

今回の記事では、筑摩書房から出版されている、ニコ・ニコルソンさん、佐藤眞一さんの「マンガ認知症」をレビューします。

ニコさんは、お婆さまが認知症を発症されて介護に奮闘した経験がある漫画家、佐藤さんは、老年行動学という学問の研究者で、認知症の症状を示す人の行動心理に注目しながら、介護のアドバイスを与えています。

認知症と診断された人に対応するためには、認知症を正しく理解することが必要

みなさんは、"認知症" を正しく理解しているでしょうか。

わたしは、「認知症になると、理解し難い行動をとるから介護が大変」といったネガティブな印象ばかりを持っていて、"認知症" がどのような症状で、どのように症状と付き合っていくべきなのか、どのように介護すればいいのか、といったことは全く理解していませんでした。

著書では、認知症は、以下に示す3点から診断される症状であると紹介されています。

"認知症" と診断される3つの要素

1. 脳に何らかの病気を患う
例えば、"アルツハイマー病" という病気にかかると、脳にある神経細胞が壊されて、結果的に脳が小さくなっていく病気です。特に、"アルツハイマー病" による認知症は "アルツハイマー型認知症" と呼ばれます。

2. 認知機能に障害がでる
認知機能には、「複雑性注意」「遂行機能」「学習と記憶」「言語」「知覚・運動」「社会的認知」の6種類があり、それらに障害がでることで認知症への診断につながります。

3. 生活機能に障害がでる
誰かの介護がなければ生活できないような状態です。

脳に病気を患っていて、認知機能に障害があっても、生活ができていれば "認知症" とは診断されないので注意してください。

さまざまな不思議行動の裏にある原因を理解する

著書では、以下のような、さまざまな疑問が取り上げられています。

"認知症" と診断された人が示す行動例 ※ カッコは原因例

- 「お金を取られた」と勘違いする(記憶障害、見当識障害、論理的思考の障害)
- 同じことを繰り返し尋ねてくる(記憶障害)
- 繰り返し注意しても、注意されたことを繰り返す(記憶障害、見当識障害)
- 突然怒りだす(抑制機能の低下、論理的思考の障害)
- 高齢者の車の事故が頻発する(注意力の低下、作動記憶の衰え)
- 介護者につきまとう(遂行機能の障害、見当識障害)
- 家にいるのに、「家に帰りたい」という(見当識障害)
- 徘徊する(見当識障害)
- 排泄を失敗する(身体機能の低下)

※ 見当識:自分の置かれている今の状況を理解すること

そもそも、さまざまな機能を持っている脳が病気にかかっている状態なので、それに伴うさまざまな不思議行動(障害)が生じることは当然です。

例えば、記憶障害による不思議行動には「同じことを繰り返し尋ねてくる」といったものがあります。

記憶には、10分ぐらいの間記憶するための「短期記憶」と半永久的に記憶するための「長期記憶」があり、認知症では「長期記憶」がうまくできなくなるようです。

つまり、同じことを尋ねられたと思っても、答えたのが10分以上前だったら、もうそれは答えていないのと同じ、ということになります。

著書の中では、それぞれの不思議行動に対して、解決策となるアイデアも提示されています。

例えば、「同じことを繰り返し尋ねてくる」に対応するためには、「あとで確認ができるように、返事を(言葉とともに)メモで返す」といった対応が考えられています。

できなくなったことを悲観するだけでなく、できることがあることをポジティブに考える

冒頭でも紹介しましたが、NHK番組「クローズアップ現代プラス」でも「認知症の私が認知症の相談にのってみたら…」と題して、認知症と診断された人とその家族の悩みを解決する取り組みが紹介されていました(2020年12月17日)。

「昨日まで当たり前にできていたことが、急にできなくなる」ような状況になったとき、認知症と診断された人はもちろん、周りの人にとってもショックが大きいと思います。

しかし、それはただ単に「"認知症" に慣れていないから」かもしれません。

脳に病気があることで "認知症" を発症しているため、ある程度の能力の低下は避けられませんが、その人らしさが失われているわけではありません。

著書の中でも紹介されていますが、不思議行動の裏には、その人の過去の記憶などが潜んでいます。

「理解できない」という理由で遠ざけたり拒否したりするのではなく、顔の表情などで気持ちを理解しながら、ありのままを受け入れることが必要です。

"認知症" と診断されたショックが長引くと、症状も悪化することが知られているので、認知症でもできることはあるということをポジティブに考えていきましょう。

レビュー書籍

ニコ・ニコルソン / 佐藤眞一「マンガ認知症」筑摩書房


今回の記事では、認知症を理解する第一歩として有用な書籍を紹介しました。「どうしてこういう行動をとるのか」ということを想像しながら、寄り添って介護できればいいですね。

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